2016年12月04日

熊楠を思ふ旅 第3弾

12月2日(金)

今日から3日間、紀伊半島の南端。熊野の撮影第3弾。いよいよ、大竹哲夫さんとの熊楠をガイドに熊野を撮影する旅の最終回。大竹さんは熊野に住み、「み熊野ねっと」の管理人として熊野の風物を発信しながら熊楠の研究を進める在野の研究者。その大竹さんが出版を予定している「熊楠とめぐる熊野の旅」の挿入写真の撮影を勝手に買って出て、2泊3日×3回で大竹さんが書いている33カ所と追記予定の1カ所を加えた熊楠ゆかりの地を、大竹さんの解説付きで巡るとっても贅沢な旅。

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羽田空港から望む富士山

今回は羽田発10:25にしてゆっくりスタート。幸先良く、羽田空港から富士山がスッキリ見えてます。11:40に白浜空港に到着し、過去2回同様に大竹さんと車で移動。まず向かったのはまずまずの色づきだった紅葉の奇絶峡。そして上富田町の田中神社。田の中に佇むその名の通りの神社も熊楠に守られたもの。その暖かい陽射しに照らされた佇まいに熊楠の想いを重ねられるようにファインダーから覗いてみた。

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田中神社

そして、中辺路を一気に走り中辺路名物で市の天然記念物になっている福定の大銀杏。1/3ほど散っていたけど、それが良く黄色い絨毯と大銀杏が抜けるような青空との色バランスとコントラストが素敵。市内の老人ホームからの集団は来年も来ようねと声が聞こえ、車で来た家族連れは落ち葉で遊び、ご近所なのか老夫婦が手をつないで歩く。この大銀杏、宝泉寺というお寺の境内に立ち地域で守られてきたようで熊楠のゆかりではないが、100年前にはどのぐらいの存在感があったのだろう。山あいの大きな陽だまりの里に幸せな時間が刻まれていた。

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福定の大銀杏

雲が増えてくる中、市内に戻り、世界遺産に追加登録された闘鶏神社。熊楠の奥さんの松枝さんは、この神社の宮司さんの四女。世界遺産になったためか日没間際にも観光バスが入ってくる。宮司さんがマイクを通して随分と軽妙滑らかに語り続け観光客の足を止めている間に一気に撮影を進めることができた。この神社林も熊楠の大切なフィールドであり、とても大切な場所で思入れも格別だったのではないかと、夕暮れに佇む大きな楠のシルエットに想いを込めてシャッターを切り今日の撮影を終えた。

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闘鶏神社の大楠

夜は早めに紀伊田辺駅近くの味光路。大竹さんオススメの「かんてき」へ。最初に白子のポン酢和えを口にして、程よい温度で口に広がりウーンと唸ったら、「それで唸っとったら、最後まで唸りっぱなしやで!」とカウンターの中から厳しそうな表情の親父さん。「最後まで唸らせて」と返したら、ニヤッと笑みで返してくれた。次々食するたびにウーンと唸らされ、最後にこの2品。ウツボの刺身は炙った部分があり、食感と味覚のダブルパンチ。思わずウーンと唸りながら噛みしめ、サバの棒寿司は、あまりに新鮮で経験した事のないプリップリな食感に酢飯との組み合せ。ウーンどころではなく、「これ何??」と言ってしまっら、「今日のは珍しく冷凍もんやのうて水揚げしたてのサバやで。」親父さんの笑みの訳はここにあり。最後は、「美味しかったというより幸せな気持ちにさせてもらいました。」と言って店を出ようとしたら、親父さんの笑顔が見送ってくれた。

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鯖の棒ずし。この厚み、プリップリ。

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ウツボの刺身

12月3日(土)

さて2日目は7時過ぎに宿を出て橋杭岩に向かう。潮があげていて海面に浮かぶ岩のシルエットを駆け足で撮影し、古座の九龍島へ。ここでも逆光を活かして波打ち際の輝きとシルエットを組み合わせて狙ってみる。与えられた条件を楽しむのが僕の身上。

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九龍島

次に新宮市三輪崎漁港まで足を伸ばし孔島と鈴島を撮影。ここは大竹さんが追加記述したいと考えている場所で、港を工事する際に地元の人が島を残したいという声があがり、やはり熊楠が助言したことが判っている。

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三輪崎漁港

小ぶりな鈴島は面白い地層が露出しており、今日の強めの熊野の陽射しが強い陰影を作り出し魅力的な被写体になってくれている。

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鈴島

大きな孔島は地元の人の地道な努力で今やハマユウの群生地となっており、芦屋の実家から湘南に球根を持ってきて毎年花が咲くのを楽しみにしているハマユウ好きな僕にはたまらない島。ハマユウ好きの僕のために一つぐらい咲いていないかと探して歩いたら、熊野の神様のお茶目さからか、まさかまさかのこの季節に1つ咲いていて来訪を待っていてくれた。ここに柿本人麻呂の歌碑が立つ事を大竹さんのみ熊野ネットにも記されている。

「み熊野の浦の浜木綿(はまゆふ)百重(ももへ)なす心は思へど 直に逢はぬかも」

大竹さんにこの歌の通り「ハマユウは熊野の花だから川廷さんはここに来るべき人でしたね」と言ってもらえて感激。来夏にはハマユウ爛漫の風景を撮りたい。

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孔島のハマユウ

うららなお天気のおかげでついついと長居をしてしまい、お昼ご飯は三輪崎漁港にあるシンプルな食堂に飛び込み。漁港にあるだけに特製ランチの鰹のタタキが旨かった。

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鰹のたたき!

帰路、潮がひいていたので橋杭岩に立ち寄りもう少しアングルを工夫してみる。そして大竹さんのとっておきのお気に入りの場所へ立ち寄ってみた。映画「溺れるナイフ」のロケが行われた串本町の小さな入り江。まるでプライベートビーチのように誰もいない静かな場所で、ふっと息抜きできる場所。カメラを向ける時だけ太陽も雲から顔を出してくれた。

会議の約束があるので一気に南方熊楠顕彰館まで戻る。田辺市内に自生していた安藤みかんを熊楠が絶賛し自宅の庭にも植えて果汁を絞って愛飲していたようで、これを増産すれば農家が繁盛すると考えて地元の自治体の首長に苗木を送ったと言われている。熊楠自邸の庭にある安藤みかんに向けてシャッターを切り今日の撮影を終える。

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熊楠邸の安藤みかん

その後、顕彰館の会議室で、顕彰会の皆さんと熊楠生誕150年周年に向けて、「南方熊楠ツーリズム」の取組み方について話合い。僕が代表を務める自然とともに生きることの大切さを伝える「一般社団法人CEPAジャパン」の理事で盟友である水野雅弘さんがここ南紀に移住した事により実現が可能となる、熊野の皆さんとのネットッワークを活かしたCEPAジャパンの地域活動に、顕彰会の皆さんのお力添えをいただく方向で建設的に進めて行くことになった。大竹さんとの旅で、熊楠ツーリズムの事前調査を行っている事にもなるので、話合いにも肌感覚や想いを込めることが出来る。写真家という立場を活用し、血肉として地域を理解していく僕なりの方法論なのだ。

夜ご飯は水野さんオススメの味光路の「千成」へ。生しらすからスタート。水野さん、大竹さんと、「南方熊楠ツーリズム」についての語り合い。大いに脱線しながらも企画の方向性を見定めて最後は鰻の棒鮨で締め。美味しいものを食するとはこうもシアワセなのかと熊野では教えられる。いろんな方々の力を借りてカタチにしたいと想いは募る。

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生しらす

12月4日(日)

いよいよ熊野撮影の旅、第3弾の最終日。まだ陽射しがあったので白浜にある南方熊楠記念館。来春のオープンに向けて改装工事が続く。敷地の入り口にシダ植物のオオタニワタリ。これは周参見湾に浮かぶ稲積島が自生の北限と言われ熊楠も保全に尽力をしたが、その後は乱獲にあい絶滅したもの。そんな話を聞かなければただのシダ植物と建物に足早に向い見過ごしそうになるが、事情を知ればこの風景は感慨深い。大竹さんから特徴を教えてもらいながら、その魅力を引き出すアングルを探す。そうすると被写体がとっておきのアングルへと導いてくれる。男であれ女であれ植物であれ昆虫であれ汚物であれ何であれ惚れた対象を被写体とするか被写体と決めた対象に惚れること。これが僕の理解だ。

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オオタニワタリ

続いて中辺路を進み霧が名物の高原へ。雨が今にも降り出しそうだが霧は次の機会に委ねるとして、霧の里たかはらで早めのランチを取り、やはり熊楠が保全に関わった高原熊野神社の大楠を撮影。

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高原神社の大楠

撮影していると雨も本降りになり、帰路に紅葉が目に付く滝尻王子を季節を意識して撮影。

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滝尻王子

そして市内に向かい、最後に訪ねたのは、今回、世界遺産追加登録された八上王子跡。ここはいつも雨の中を訪ねていることになる。しっとりと濡れた風情が似合うと勝手に解釈している。

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大竹さんと八上王子跡にて

そして今日も顕彰館。今日は学術部長の田村義也さんと「南方熊楠ツーリズム」構築に向けた段取りを打合せ。有り難い事に田村さんからは、CEPAジャパンという組織の活動を大きく捉えていただき、あくまでも南紀熊野のローカル活動としての熊楠コンテンツと位置づけてもらい、こちらの思考もスッキリして自分たちの役割というものを考える機会となった。

これで、全9日、目的とした訪問は少なくとも34箇所。大竹さんのオススメ場所を含めると36箇所。雨天は2日。それも半日だけだったが要領良く雨の風情が撮影できた。粘り過ぎて予定時間を押してしまいつつも予定した場所で常に巡り合わせの良いシャッターチャンスが訪れる旅で大竹さんとの相性の良さを勝手に実感。だからこそ眼力と腕を問われる取材でもあり写真家精進の良い機会となった。それと、熊野の多くの神様の中に、絵心のある写真の神様もいらっしゃったのだろうな。感謝です!

大竹さんは様々な所で講演した原稿をウェブで公開している。その中で熊楠が示したサステナブル・ツーリズムについての記述が「南方熊楠が夢見た地域の未来」という講義の中にあるのだが、このようにして熊楠の言動を非常に判りやすく解釈して伝えてくださる。熊楠を現代に伝承する貴重な人材なのだと思う。

そんな大竹さんから学んだ熊楠を通して感じる熊野。これで終了することなく、機会を見つけて足を運び質と量を充実させていきたいと思う。特に湿度を帯びた熊野らしい光景が欲しいし、熊楠の粘菌の世界や森のバロックと言われる世界も表現したい。まだまだ規定課題を残しているのだ。

文中の熊楠ゆかりの地のテキストリンクは全て大竹哲夫さんが管理する「み熊野ねっと」です。

これまでの大竹哲夫さんとの撮影紀行「熊楠と熊野をめぐる旅」はこちらからお読みいただけます。
2016年10月 熊楠を思ふ旅
2016年11月 熊楠を思ふ旅 第2弾

posted by 川廷昌弘 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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