2014年01月25日

山の男の死

Facebookのタイムラインで、僕が撮影した人物写真が目にとまり読んだ文章。書いた方は速水林業の速水亨代表。そのまま転載させていただきます。

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「高校を出てから50年速水林業でずーと働いてくれて退職、その後時間があれば請負で手伝いに来てくれて、牡蠣の筏用の足場材を一本一本節を綺麗にして、なんとグラインダーまで掛けて、「速水で出すからには使う人が喜んでくれないと」と言って、合わないのに手抜きを自分に許さなかった。

育林の技術というか勘はピカイチ、彼の育てた山は一目で分かるくらい良い山が育つ。本好きで親父に面白い本を聞いては読んでいた。父の書いた「美しい森を作る」を宝物のようにして読んでいた。

妻の紫乃と結婚して山に行った時に彼がいて世話をしてくれた時のことを妻は「あーこんなに親身になって尽くしてくれる人がこの家にはいるのか!」と驚いたと言う。

今夜は彼の通夜。。。昨年の夏に病に倒れ、闘病していたが22日の夜帰らぬ人となった。

写真家の川廷さんに山で撮ってもらった写真が彼のお気に入りで、その写真が通夜の入り口で迎えてくれた。手にタバコ。。ちょっと渋い顔。そのタバコが原因で逝ってしまった。

何故か速水林業の従業員で、私と同じ位の年齢の者が3人も早く逝ってしまった。皆、親父や私を心から慕ってくれている連中ばかり!寂しいね。でも連中が育てた山は育ち続けているから、負けないように良い山にしたい。林業経営は厳しいけど、意地だよね。彼らに報いなきゃ。」

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転載ここまで。


お亡くなりになったのは藤原高由さん。山では年下の従業員からも「たかちゃん」と親しみと尊敬を込めて呼ばれていた、まさに樵であり、杣人です。

初めて撮影に入った時は、調査のため鉈で印を付ける作業を追いかけました。急斜面を一日かけて山猿のように動き回る杣人たち。そんな中、「たかちゃん」は足袋で動き回っていた。昼休みにタバコをふかすポートレイト。この写真が飾られているそうです。


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山を降りる時、「鉈やってみ」と言って自分の道具を持たせてくれたのでした。もちろん、皆さんのように出来なかったので「カメラだけか」と愛情たっぷりの笑顔を向けてくれました。帰りながらも最後までヒノキに絡み付くツタを、気がついたら切り落としていたのが印象深い。この時はハッセルブラッドも持ち込んだのでこんなシーンも撮影できました。


藤原高由さんs.jpg


夏の夕暮れ、作業が終わって作業小屋に戻ったとき、代表の速水亨さんが待ち受けていたので、「ご一緒に写真をどうですか?」と声をかけたら、「こうして亨さんと写真を撮ったことないからうれしいなあ」と言ってとても緊張されていて、速水さんに肩をほぐしてもらっているところです。


IMG_3041.jpg


春の山で、僕の山の写真の師匠である川端徳夫さんと瀬場谷の山桜の撮影をしていたら、今は全く作業のない山なのに、「たかちゃん」が草刈り機を持ってどこからともなく現れ、「作業はなくともこうして手をいれとかんとな」と一人で黙々と作業をしたあと、林道に座り込んで話し始めたところです。


IMG_2404.jpg


春の夕暮れ、作業が終わって疲れているはずなのに、ニコニコ笑顔で林道に戻ってきて、おもむろに座り込み背中に背負ったリュックからたくさんの山菜を出してきて、「今晩のおかずや」と楽しそうにしているところ。


IMG_1315.jpg


初夏の山で、山の仕事に就いて日が浅い若い杣人とペアを組んで、口数は少なく、時に厳しい視線を注ぎながら黙々と作業を続ける姿もあります。


IMG_4934.jpg


気持ちの良い陽射しの中、タバコをお腹に載せて昼寝。


IMG_3909.jpg


夕暮れ、クルマで作業小屋に向かう前のひととき、真剣な表情で語るシーン。


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誰もいない休日の作業小屋で、一人黙々と道具を洗うたかちゃんがいました。僕に気がついたら、手を止めてくださって、山のこと、作業のこと、何か伝えようと話をしてくださいましたが、方言が強くて100%理解出来なかった事が悔やまれます。

山への愛情。木への愛情。仕事への愛情。速水林業への愛情。地道で丁寧な仕事こそが、本当に良い山を育てる一流の仕事なんだと、言葉ではなく背中で見せてくださる人だと感じていました。

今夜、その「たかちゃん」のお通夜だと知ったのが、速水さんのFacebookでした。僕の写真が通夜の会場で迎えていると書かれてあります。写真家冥利に尽きます。こうして打つ画面が滲んで仕方がないです。

山の男たちの写真を撮り続けなければならないと、今夜改めて啓示を受けたように思います。遠く離れた星空の下で、一人静かに「たかちゃん」の写真データを集めて眺めながら、ご冥福をお祈り申し上げます。

と、書いていたら、急にガラス窓を叩く雨の音。涙雨を聴きながら眠ります。


posted by 川廷昌弘 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
川廷 昌弘 さま
FBでつながっている福田と申します。
私たち地元のものは意外なほどに林業の事を知りません。
そんな中で川廷さんの写真や、お話しからいろいろと勉強させていただいています。
今回の藤原高由さんの事もこのブログで初めて知りました。
漁業や私たち生業商売とは違い、結果がすぐに出ないのが林業です。
それだけに日々の山に向き合う姿勢が次世代の山師の生活に繋がっていくものだと思います。 
そういう世代を超えた想いというものを持って仕事を日々こなしていかなければいけない。
藤原さんのような方が若い方からもっと出てきてこの地方の林業が豊かになっていくことを願います。
私のタイムラインでのシェアさせていただきアップします。
記事をアップしていただきありがとうございました。
Posted by at 2014年01月26日 10:16
福田さん、コメントありがとうございます。

たかちゃんの命が、
林業からのメッセージとなっていくことを祈っています。

Posted by Kawatei at 2014年01月26日 10:49
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