大きく穴を掘り、その横で、生ものの解体作業を行っています。その生ものを波打ち際から引きずってきた後が砂浜に残っていました。近づいてみるとウミガメでした。
少し声をかけて話を聞いてみました。
きっと海を漂っていたものをライフセーバーが砂浜に引き上げてくれたのでしょう。とても不自然な形で打上げられたように置かれていました。死後数週間は経っているようなので、死因を特定する事はできません。内蔵を見ていますが、栄養分は充分で餓死でもなく、ビニールなどの異物もなく、気になる外傷もありません。
良く声の大きな著名な有識者が、ウミガメがビニールなどの人工物を食べて窒息死するような事を言っていますが、僕はこうして死んで打上げられたウミガメの検体を何十体もしてきていますが、いまだにそんな事が原因で死んだウミガメは見た事がありません。もう少し自然界の事を真剣に研究して欲しいと思っています。
いま発見しましたが、このウミガメはオスです。しかも若い。しっぽの長さや外見では突き止められないのですが、暖かい海で10年も過ごせばこのような大きさに成る場合もあるし、冷たい海であれば、ここまで大きくなりません。だから、検体しないと年齢はわからないのです。
そんな風に検体をしながらの会話。鵠沼海岸の住民としての興味と、自然資源に支えられた暮らしを普及啓発するNGOの代表の立場と、いろんな気持ちが入り乱れてしまって、この若き研究者の所属や専門を聞く事もせずに、異臭に包まれたこの場を静かに立ち去りました。
いつかどこかでこの研究者が、しかるべき場で現場の研究に裏付けられた結果を発表される事を期待したいと思います。
しばらく砂浜を歩くと、幼い兄弟が一枚のサーフボードを抱えて歩いています。きっと一日遊んで疲れ果てたのでしょう。お兄ちゃんは弟にイライラしながら指示して、弟は疲れて持ちきれないのに、必死に抱えています。
今日も鵠沼海岸は、こんな少年達の夏休みを見守っていたようです。僕は写真家として、こんなシーンを積み重ねていくだけです。これが僕の大好きな夏休みです。
自宅の庭では、今年もハマユウが素敵な花を咲かせてくれています
ウミガメの検体
夏の兄弟