2012年03月17日

日本生態学会第59回全国大会の自由集会で発表

震災復興における生態学の役割とは?海と田んぼからのグリーン復興プロジェクト活動報告

企画者: 岩渕翼, 菊地佐智子(東北大学)
コメンテーター:川廷昌弘(CEPAジャパン)

■生態系を配慮した復興の重要性 菊池佐智子(東北大・経済)
■海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトの概要 岩渕翼(東北大・生命)
■津波による撹乱を受けた生態系のモニタリング(水田、干潟) 占部城太郎・鈴木孝男(東北大・生命)
■東日本大震災で被災した田んぼの生態系システムを利用した復興 岩渕成紀(NPO法人田んぼ)
■自然を活かした浦戸諸島の復興 河田雅圭(東北大・生命)
■生物多様性BMPs(Best Management Practices)確立に向けた情報共有と発信 服部徹(CEPAジャパン/東北大・環境)

生物多様性に関する様々な活動をしてきていますが、このような発表に関わるのは初めてかなという経験でした。東北大学の生態適応グローバルCOEが中心となって、市民団体や企業メディアと一緒に災害直後の4月からプロジェクトを発足し、会議と現地調査などを重ねてきました。災害によって改めて、自然の恵みに支えられて来た地域の営みや、自然と共生してきた地域の知恵など、生物多様性を暮らしで会得し営んできた日本人の故郷のような東北を、改めて理解するプロジェクトでもあります。

全体で2時間、最後の30分をディスカッションにしたいという企画者の希望で、コメンテーターとして時間の配分も考えながら進行してみました。まず最初に環境に関する国際会議の歴史を踏まえてこのプロジェクトの位置付けの整理を菊池助教授と、海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトの全体概要を東北大学フェローの岩渕翼氏から説明があり、その具体的な事例報告を3人の先生から行いました。

広大で甚大な被災地のモニタリングを、焦らずゆっくり10年かけて市民参加で行う事で、これまでにない成果を得る事を期待すると考える占部教授の報告、潮をかぶった田んぼで、「ふゆみずたんぼ」によって減塩し作付けをしたら昨秋の収穫は実り豊かで、そのお米を「福幸米」として「1+1=田」、つまりコーズリレーテッドマーケティングで販売している向井先生の報告、松島湾の浦戸諸島で、様々なモニタリングと、生物多様性の知識豊かな営みをしている島民や、支援に入っている山形大学や多様な市民団体との地域活性を進める河田教授のお話。

これを受けるような形で、CEPAジャパン理事で東北大学で研究を続ける服部徹氏の、生物多様性に関するBMP(ベストマネジメントプラクティス)確立に向けた情報共有と発信という生態学と情報文化のマッチング視点など盛りだくさん。

残り30分のディスカッションのために、会場の皆さんに僕からこのプロジェクトを今後どのように活かしていくのか、リオ+20への日本からの提言である「石川宣言」のメッセージにグリーン復興を挿入した事と、環境省が推進する復興プロジェクトとの連携が具体的に見えて来ている筋道、などを話してイメージをしてもらおうと考えました。

ちなみに環境省の「三陸地域の自然公園等を活用した復興の考え方」の基本理念の中にこのような記載があります。(東日本大震災からの復興に当たって、東北大学生態適 応グローバル COE、NPO 法人田んぼ、NPO 法人森は海の恋人、NPO 法人環境会議所 東北及び NPO 法人サステナブル・ソリューションズ~小さな渦を育てる杜~が構成団体 となり、「海と田んぼからのグリーン復興プロジェクト」に取り組んでいます。森・里・川・海のつながりで自然環境をとらえた際に、例えば、森・里=グリーン、 川・海=ブルーというイメージも連想されますが、本答申においてはグリーンが有する 「自然環境」や「生態系」、「エコロジカル」といった幅広いイメージを踏まえ、ブルー のイメージも包含するものとして「グリーン復興」という言葉を採用しました。)「環境省資料より転載」

会場は約60名ほどで良い感じで席が埋まった印象、会場からの発言も活発で、このプロジェクトに同じ生態学の皆さんも注目されている事がよくわかりました。

■モニタリングに関して住民との恊働のあり方。
■地域植生にない善意ボランティアによる活動、生態学者の保全活動との違い。
■生物多様性と代替エネルギーのトレードオフ。
■復興計画と潜在湿地。
■モニタリング参加による地域生態系の理解による郷土愛で復興計画への疑問を生む仕組みづくり。
この他にも様々な意見交換がありました。

しかし、何より学問の世界をいかに暮らしにつないでいくかがCEPAジャパンの役割であり、持続可能な社会づくりに欠かせない行動です。今回のディスカッションでも明らかになったのは、地域の自然を資本として経済活性し、自然の恵みで豊かな地域を形成するためには、自治体などの政策決定者に、基礎知識として東北の生態について理解してもらえるようにアプローチする事が重要であり、また農業高校の先生方への地域性の理解浸透も重要。つまり生態学を暮らしにつなぐためには、その地域を自治している政策決定者に対して諦めずにアプローチする必要があります。子ども達への教育、生涯学習での教育、教育者への教育、そして自治組織への教育。生態学をCEPAする重要性を改めて思い知った学会の1日でした。

尚、この日の資料は海と田んぼからのグリーン復興プロジェクトのサイトで確認できるようになります。


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龍谷大学で開催された日本生態学会の自由集会会場


posted by 川廷昌弘 at 23:17| Comment(0) | TrackBack(0) | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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