2021年03月04日

写真家・鷲尾倫夫さんと語り合った

自分の写真展で初めて鷲尾倫夫さんと語り合えた。偶然、個展の初日に鷲尾さんからお電話をいただいた。「じゃ見にくよ。」と言われたが、たまたま在廊していた今日、ふらっと入って来られた。ご縁、波長とはそういうものなのかも知れない。

更に、たまたま展示の打ち合わせに来られていた石内都さんと目の前で鉢合わせになった。芳名帳に鷲尾さんと石内さんの名前が並んでいる。石内さんは展示を見て「頑張ってくださいね」と言ってお帰りになった。光栄な瞬間だった。

さて、僕の写真は鷲尾さんの目に止まるのか?極めて緊張する時間だったが「いいな」と言ってもらえた。「孤独だろ?」と言われて二人で大笑いした。そして噛みしめるように、いつもの如く、ご自身に言い聞かせるように出た一言が心に響き渡った。

「写真は物語じゃない」

鷲尾さんですら写真を組んでいく時、撮るプロセスや時間に思い入れがある写真を選んでしまうという。それを「甘い写真」とおっしゃる。その瞬間が放つ力が写真であり、プロセスはどうでもいいんだと。「物語は他人が語るもので自分で語るものじゃない」。

この一言一言が自分の言葉のように染み込んでくるようになった。ここに写真を組んでいくときの「たしなみ」がある。写真集を編集してくださった大田通貴さんが展示を見て「大人になった」と言ってくれたのと同じ話だ。写真家として自分の成長を感じることができる。これだけで今後の写真家人生に大きく影響を受け続けることになるだろう。

2009年に知り合って以来、鷲尾さんの個展会場でお会いするたびに言葉をいただき写真家としての眼力を鍛えてもらって来たと思う。「受光体は自らを磨き発光体を探し出会う」(2009年)。「文章は一枚の写真」(2013年)。「相手が語るまで待つ」(2015年)。その時その時の自分の実力に応じて入って来た言葉のように感じる。

鷲尾倫夫さん、1941年生まれで、なんと今年80歳。とてもそんな年齢には見えない気力。80-90年代は「FOCUS」(新潮社)の専属カメラマン。つまり時代のスナイパーだった人。多数の個展を開催されている。受賞歴に1991年『伊奈信男賞特別賞』、1996年『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』がある。現在のテーマは沖縄。次の展示は5月を予定されている。まだまだ現役のまま導いていただきたい。

鷲尾倫夫さんの「写・写・流転」(2009年)
写真は一枚。文章は一枚の写真(2013年)
鷲尾倫夫さんの写真展「巡歴の道オキナワII」を観た(2015年)

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(撮影:岡部優香里さん)

posted by 川廷昌弘 at 00:55| Comment(0) | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする