印画紙は大阪写真専門学校で使い始めたILFORDをもう30年ほど愛用している。しかし2013年頃に国内での取り扱いが変わって値段が倍増し、暗室ワークもこれまでかと思っていたら、海外からの取り寄せだと半額近い値段で手に入ると知り息を吹き返した。
NYにリアル店舗があるB&Hは、ネットでも日本円で表示されているので購入しやすいため、多くの写真家が利用していると聞き活用する。
B&Hのリアル店舗(Googleストリートビューより)
今回の作業では、その頃に国内で購入していたバライタ紙がまだ手元にあったのだが、10枚ずつの小ロットで作業に没頭するには枚数が小刻みのため、無意識にB&Hで購入した50枚入りのBOXを使った。するとこれまで経験で培ったデータよりも光を強く感じ違和感を持ったけど、露出を絞ったためなのかこれまでになく階調が豊かに再現でき、期待以上のプリントワークができたので、気分も良く調子に乗って作業を進めることができた。
3日目の今日、50枚を使い切ってしまい、ストックしていた国内で購入していた印画紙でプリントをしてみたら、光を感じにくくデータがまた狂ったと愕然とし一瞬落ち込みかけたが、何でだろうと両方のパッケージを見比べれみたら、何と!同じバライタ光沢厚手だが、商品名が写真の通り違うのである。これに今頃気がついた。B&Hで購入したのはCLASSICとなっている。
同じタイプの印画紙だが表記が違った
慌ててネットで調べてみたら、このようなデータを掲載している写真家の斎藤純彦さんのサイトを見つけた。
性能向上に関してメーカーの記述を抜粋転記。
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イルフォード・マルチグレードFB CLASSIC ファイバー多階調印画紙は、イルフォード・マルチグレード IV FB ファイバー多階調印画紙の後継製品として、以下のように性能が向上しています。
・最大濃度が上がった
・水洗時間が50%短縮
・露出時間が短くなった
・各グレード間の階調差がより均一
・画像がシャープになった
・現像時に画像がより速く出現
・階調特性が改善された
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腑に落ちる、腹に落ちる、合点がいく、自分が感じた通りのことが書かれているので大いに安堵した。さらに詳しく斎藤さん自身の見解が書かれている。志向する表現が違うので、その見解がさらにヒントになった。
そして何より感激したのは、デジタルカメラ隆盛のこの時代に、バライタ印画紙の性能をILFORDと言うメーカーは向上させてくれているということだ!もう行く末が見えないと思いながら、12年ぶりに、自分で暗室にこもりプリントをするモノクロの個展を開催するにあたり、驚きと感激、そしてモチベーションが500%ぐらいアップなのである。
そうなると、暗室機器の寿命が心配になってくる。1991年に大阪写真専門学校(現ビジュアルアーツ大阪)の夜間部に入学した際に購入した機器が現在も元気に動いているのである。
引き伸ばし機はLUCKY 90M-D、タイマーはLUCKY Timer3、そしてセイフティライト。イーゼルはLPLユニバーサルイーゼルマスク5132。
印画紙が進化している現実を知り、どうか生涯の友であって欲しいと切に願う今日なのである。
今日の暗室
2月の個展では、このように暗室ワークに新たな生きがいを感じ、様々な場所で出会った光景に再び感情移入しながら、印画紙に焼き付けた成果を展示したいと思いますので、是非とも来てくださいね!
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川廷昌弘写真展
「松韻を聴く」
場所:蒼穹舎ギャラリー
日時:2021年2月22日ー3月7日 13:00-19:00
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DMの入稿原稿