2017年05月19日

ただものではない「海北友松」という絵師の人生を観た

Facebookのタイムラインで目に飛び込んだ京都国立博物館の開館120周年記念特別展覧会。最後の土日は混雑すると思い、たまたま今日の予定を見たら新横浜で15時に終わるので、思い立ったが吉日&勝手にプレミアムフライデーにして、自己表現を追求する姿を学ぶために新幹線に飛び乗った。

海北友松。恥かしながら知らなかった。観たこともなかった。武家に生まれ桃山の世に絵師として83歳まで生きた。狩野派から独立して60歳を越えてからの作品だけが展示されている。

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晴れ舞台を得た60代、体力の充実と気力に満ちた70代、豊かな詩情を表現した80代。現代ならまだしも信長が人生50年を謳った戦国時代にこの寿命。今を生きる者にとって最高の手本であり心の師匠である。

狩野派とは違う独特で自由な筆使いによる松。画面への取り入れ方とその描き方に激しく刺激を受ける。重要文化財の「雲龍図」も龍が松を描いているように見える。

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それにしても、これだけの作品をいつ頃から作品として扱い保存を目的としたのだろう。その判断をした人は誰だったのだろう。とても神経が行き渡った展示会場を見てつくづくと思う。これだけの近代技術に守られている作品は、これまでどのようにして守られ展覧されてきたのだろう。

京都国立博物館の平成知新館は、とてもゆとりある設計で大きな作品が堪能でき、1回目は丁寧に全てを見て回り、再入場の2回目は、気になった作品をじっくり見直したり階段から吹き抜けの展示場を見下ろしたりして、友松の世界を網膜に焼付けた。京都の金曜20時までの観覧は、予想通り東京と違い全く混雑することなくしげしげと自分のペースで全ての作品を眺めた。

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今のような多くの肩書きなど欲しくなく、ただ一つの写真家として生きたい僕の背中を押してくれる。まだまだ焦ることはなく、来るべき日々のために毎日を積み重ね強い精神と体力を得ることだと、会場全体から見下ろしてくれているように感じる。

僕の表現したい世界である「松韻」。これをとにかくコツコツと続ける。今日の刺激を生涯忘れることなく自分ならではの世界を構築する。誰に振り返られなくとも自分の表現を信じて続ける。

勇気をもらったと言うより、何を焦っているのかと叱責された。己を知り己を磨けと言われた。まだお前なんか見えていないから、何度でも立ち止まり考え直しやり直しても大丈夫だぞと、実は優しく言ってもらったように思う。

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建物を出ると、1年で最も日が長い季節に近づき気温も高く爽やかな夕暮れ。カフェの外の席で抹茶オーレを注文して日が暮れるまで座っていた。カタログで眺めるのではなく、展示空間で体で観なければきっと一生後悔すると思った。京都国立博物館に滞在したのは17時半から20時。このためだけに京都に行った。自分への投資。とても幸せな時間だった。

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2017年05月06日

月明かりと夜光虫

湘南の夜の幻想的な風物詩。

5日の夕方、海を散歩していたら赤潮が発生していたので、これは夜間撮影だと決めて防寒着にカメラと三脚を持って夜の波打ち際で粘ってみた。

アップした写真は、意図的に月明かりをセンターにしたもので背景に夜景がきてしまっているが、この他にも人工的な光を排除して月明かりと夜光虫だけのシンプルなアングルにもトライして、光が弱まるまで粘ったら深夜になっていた。

強い南風でカメラも自分も潮まみれになったけど、久しぶりに夜光虫を楽しむことができた。波が寄せるたびに刺激を受けて体を発光させるので、まるで丘から多数のブルーライトを照らしているような感じ。

2003年9月に生まれて初めて夜光虫を見たときは、たまたま夜の海を撮影してみようとカメラを持って行ったら、波がブルーに発光して打ち寄せるので、どこで誰が光を当てているのだろうと、ライトアップイベントなのかと本気で思ったほど見事だった。その印象のままに、今回も波が打ち寄せるたびに思わず声をあげてしまうほど。

翌日になってニュースで鎌倉が特に異常発生で相模湾全域に広がっていたと知った。今のところ漁業被害もないようで何より。

相模湾では、ほぼ毎年のように4月ごろから9月ごろまで、海水温の上昇に伴って赤潮が発生する。特に潮目に沿って帯状に広がるヤコウチュウによる赤潮が発生する特徴があると、神奈川県の資料には書かれている。赤潮はプランクトンの異常発生によるものと言われているが、プランクトンが必ずしもヤコウチュウとは限らないようなのでラッキーだった。

好天続きのGWで、さらに素敵な被写体をプレゼントしてもらえて幸せです。

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月明かりと夜光虫


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2017年05月04日

東北の海岸林6 牡鹿半島の静かな入り江

5月2日、今日から南三陸を出て、車中泊の撮影旅に出る。

まず、雄勝に向けて走り出し、途中、石巻で味わい深い佇まいを撮影。雄勝では、雄勝硯協同組合の高橋さんにいろいろ教えてもらった。

硯としては仏教の布教と共に必要となった硯石をこの地で見出し産地となって約600年。明治に入って洋風建築に必要なスレートに、この石が合うということになり普及。東京駅に使用されたのは有名。しかし採石量はそんなに多くなく、津波に呑まれた素材を拾い集めて磨いて販売している。とても思いを感じる商品。自宅用に購入する。

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雄勝硯協同組合の高橋さん達

さて、松韻シリーズである。

今回は牡鹿半島の海水浴場を訪ねることにし、まず最初に向かったのは雄勝の荒波海水浴場。ここは砂浜のど真ん中に雄勝特有の大きな岩が鎮座している。いつまでもこの風景が守られて欲しいと願う。

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荒浜

女川方面に向かっていたが日没のため、指ガ浜の仮設住宅跡地で車中泊。21時にはダウン。

5月3日、4時起床。

あまりにも寒いのでダウン着用。女川駅に向かい駆け足観光した後、地名が素敵な夏浜海水浴場に到着。小さい砂浜だがとてもきれいで静かな場所。歩いてビックリ鳴き砂だった。

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夏浜の出会い

ここで、石巻から釣りエサにするいさだを採りに来た老人と話し込む。この辺りでの釣り道具屋で3,000円ぐらいで当たり前に売っている「いさだ網」を器用に扱って短時間でバケツ2杯分。それを砂にまぶして持ち帰るという。撮影もさせてもらったが、あえて名前も連絡先も聞かずに別れた。旅の良い思い出にしたかった。

続いて女川原発の隣にある小屋取海水浴場で撮影。原発の有刺鉄線の前に津波に洗われ立ち枯れた一本の松がある。これを撮影していたら、予想通り警備員がやってきた。聞かれることはわかっていたので、東北の海岸線で津波の記憶を刻んだ松を撮っていると伝えた。

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女川原発の敷地と砂浜

次の撮影地に急ごうと思ったら、五部浦湾の野乃浜に立ち枯れた松が何本も佇んでいる。これは1時間コースだと思って粘る。手応えは感じる。少し調子が出てきたように思い次に急ぐ。

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野乃浜にて

十八成浜。海水浴場らしい典型的な松が数本残って元気に立っている。その海側には巨大防潮堤の建設が進む。その中で1本、とても立ち姿が美しい松があり、その印象のままに撮影。去りがたい場所。

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十八成浜の防潮堤工事

夕暮れとなり、御番所山の展望台に。初めて金華山を望んだ。草地の斜面にいい感じで佇む松を撮影。頭上では松韻がそよぐ。ここからの夕暮れが良くて日没まで撮影したので、ここで車中泊とする。月夜の外はダウンが必須の気温だが寝袋は暖かく快適。

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御番所山からの眺め

5月4日、3日目の朝、明るいので目が覚めたら6時半。寝坊である。地図アプリでチェックした海水浴場を訪ねる行程。昨日は、朝の老人とののんびりした時間を過ごしたことで心にゆとりができ、充実した松韻撮影ができたので朝からスイッチが入っている感じがする。

石巻市の谷川浜は、平地は何もなくなってしまった風景が広がるが法面が広い防潮堤が姿を現していた。大谷川浜は小さな集落のエリアで防潮堤はない。いずれも撮影対象がなく先を急ぐ。

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完成間近な防潮堤

前日に撮影した野乃浜。意外と広く反対の端には女川第六小学校と第四中学校の跡地があった。記念碑を見ると小学校は明治6年開校とある。閉校は2010年で136年の歴史を刻んでいた。地方も都会も豊かさは関係なかった証しではないかと感じる。浜では打ち上げられた松が海に向かって立ち上がっている。その後ろ姿に思いを込めた。

隣の大石原浜でも打ち上げられた松、崩れた崖から抜け落ちた松、立ち枯れた松。いずれもその印象をより強くできるよう撮影した。

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女川第六小学校前の浜

ちょうどお昼前に女川駅周辺に入ってしまって少しの距離だが渋滞にはまった。この連休で初めての渋滞。すぐに抜けて御前浜海水浴場に向かう。ここでは良い被写体がなくお昼ご飯を食べて沖を眺めていたら、少し先に気になる入り江が見えた。

正確な地名はわからず、地図アプリで最も接近するあたりに車を止め道を探すが道はなく、杉林や竹やぶを縫うように人が歩いた跡を辿って降りていくと、誰にも使われなくなった空間が広がり、5月の日差しに立ち枯れた木々や打ち上げられた木々が眩しい浜だった。

立ち枯れた木は広葉樹だったが多数打ち上げられたものには松が多く、この地でも聞こえたであろう松韻に思いを馳せ、じっくりと被写体と向き合いシャッターを切った。

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地名のない入り江

ここから一気にくりこま高原駅に向かおうとしたら、波板海水浴場とある。立ち寄らないわけにはいかない。松韻風景を感じる被写体はなかったが、小さな砂浜の全体を歩いてみた。丘には津波でさらわれハワイのオアフ島に流れ着いた第2勝丸が奇跡の生還と看板が立てられ置かれていた。

これで今回の車中泊での撮影は終了。

天候の加減で幸いなことに、日々ヤマザクラの花のつき方が変わっていった。もう散り際かなと思ったら咲き始めでみるみる満開を迎えていった。牡鹿半島の道では、カーブを曲がるたびに多様なヤマザクラが立ち現れ、ハンドルを切るのが楽しく気分が高揚する運転だった。

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カーブを曲がるたびに声をあげていた

今回は、地図アプリで海水浴場を探し航空写真で松韻写真が撮れそうか目星を付けて走ってみた。たとえ良い被写体がなくても、夏の賑わいを想像する楽しい空間に出会う旅ともなった。

日が沈めば車中泊の準備を始め、その日1日の撮影成果を整理する。そうするうちにうとうとして眠ってしまう。日の出前後に目が覚めてまた走り出す。天候にも恵まれた自分の表現を探し求める旅。

数カ所では防潮堤の建設が進む一方、海抜の低い道路から穏やかに海を望める場所もまだ残る。自分が撮影した写真には、これから意味が付いていくことになる。

考えられないぐらいのボリュームの仕事や活動や学生生活などで睡眠時間を削って生きているが、少しでもこんな時間が過ごせて幸せだ。

時間は自分で作るもの。もちろん理解者あっての実行。また旅に出よう。

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こんな風景に出会えるから旅はやめられない

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2017年05月02日

南三陸で4年目のGW

ゴールでウィークの初日は新緑に恵みの雨。

南三陸の入谷にある、さんさん館の「かもしか文庫」で、林業家の佐藤太一くんと今後の活動について2人で語り合う。いつもながら発展的な議論が重ねられて心地よい。

南三陸の山はタイミング良くヤマブキが盛り。大好きな眺め。2014年に初めて山を撮影した時もこの季節。ヤマザクラも咲き揃い始め、しっとりした風情が写欲をそそる。日没まで撮影。

2日目は朝から快晴で気温も上昇。ヤマザクラがあちこちで主張を始めたので出会い頭を楽しむ1日にしようと思い、空振り覚悟で秋の紅葉で印象に残った場所を訪ねてみることに。入谷、志津川、戸倉に歌津。駆け足で町内を巡り、期待した場所は桜ではなく、思わぬところで咲き誇っていたり、日没後の最後に出会った桜は志津川湾を背景に佇んでいた。

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林業地を彩るヤマブキ

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思わぬところでの出会い

3日目、午前は町役場で会議、午後は戸倉でFSC認証、ASC認証を取得している「南三陸杉」と「南三陸戸倉っこかき」のものがたりとものづくりを考える「山さございん」と「海さございん」プロジェクト合同実行委員会を開催。

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海さ、ございん&山さ、ございんプロジェクト実行委員会

冒頭に漁協運営委員長と森林組合長から熱い議論を促す挨拶でスタート。

漁協からASC南三陸戸倉っこかきの販売状況と、森林管理協議会からFSC南三陸杉の販売状況の報告や、南三陸ブランド、南三陸のプレミアムなおもてなしを具体的に進めるための事業の昨年度報告と今年度計画を事務局から共有。

そもそも南三陸の海や山にとってASCやFSCとは何かから、価格に反映する高付加価値とは何かまで、それぞれに白熱した議論が行われ、密度の濃〜い3時間となった。

夕暮れ、波伝谷に佇む桜が印象的でいつまでも去りがたい気持ちで撮影。

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波伝谷の夕暮れ

4日目の朝、南三陸は神行堂山の火防線トレイルを撮影。鈴木卓也さんをリーダーにパタゴニア社員の方々や様々な大学の学生達がコツコツと切り開くプロジェクト。思えばパタゴニアの篠さんに南三陸に誘ったことがきっかけとなって、卓也さんの志を支える良きパートナー企業となってくれた。

今日は、神行堂山の山頂に向かう火防線を歩いてみた。山頂あたりで皆伐地があり一気に視界が開け、空気もクリアで遠く雪をかぶった山々が見え、イヌワシが再び舞う空に想いを馳せる時間。

聞こえてくるのは、様々な野鳥の鳴き声、アカゲラの突く音、駆け抜ける風の音、自分の乱れた呼吸だけ。ああ幸せなり。

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神行堂山の火防線トレイル

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